はじめに、当然NGですが、親が子どもの口座を使って、自分のために資産運用すると、「どんな得」があるのでしょうか?
すごくざっくり答えると、「年間43万円の利益までは、税金がかからないです。所得税も住民税もです」。これにより毎年9万円の税金を収めなくてよくなります(大切なのことなのでもう1回言います。本当はNGです)。
そんなことを税務署が許すはずはなくちゃんと取り締まりがされており、世の中のキーワードだと名義預金、名義口座、名義株、贈与税あたりがこれです。
それでは本題です。親が自分のためではなく、「子どものため」に資産運用することはどうでしょうか?
これもざっくり答えると、全く問題なしです。法律的に認められています。これは、世の中をまだ知らない子供は親が守ってあげなくてはならず(親権です)、これは子どものお金についても当てはまるからです。
この2つのケース、税務署視点では見分けがつかないですよね・・・。正しい目的なのに、変な疑いを掛けられるのは気持ちいいものではありません。そもそも疑われないようにすることが重要ですが、チェック役がいる以上、一定の確率でその順番があたなに回ってくるかも知れないのは事実です。
知識習得と証跡集め
まず押さえるべきは、大前提となる法律です。拠り所ですね!
(財産の管理及び代表)第824条
民法第824条
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
つまり、ざっくり言い直すと「子どものお金の管理は親がやるのは問題ない。でもちゃんと本人にOKもらってね」ということです。では具体的にどのようにすればよいのでしょうか?
答えは下記4点です。名義預金、名義口座と疑われないためには、これらの準備をすることです。
- 預金通帳、銀行印の管理は子と孫が行う
- 贈与の事実を子と孫に伝え、贈与契約書にサイン又は捺印させる
- 贈与に伴う資金の移動は預金口座間で実施する
- 子と孫が未成年の場合は、両親(親権者)が法定代理人として、通帳と銀行印を管理し、かつ、贈与契約書には子と孫のサイン又は捺印に加えて、両親(親権者)もサイン又は捺印する。
特に「4」が重要です。これは実務上のノウハウではなく、法律(民法)に則った対応です。民法上、子供が未成年者の場合には、親権者が子供の財産を管理することになっているからです(民法824条)。ただし、この規定があるとはいえ、子や孫の預金口座があることや父や祖父から相続を受けていることはちゃんと話をしておくことです。
ケーススタディ
ここでは、そもそも何が問題でだからどんな対策が必要なのか、ロジックを整理します。
シチュエーション:親が子どもの口座にお金を振り込む
「子どもの教育費は子供の口座で管理したいなぁ。毎月10万円、つまり年間120万円を親の口座から子どもの口座に振り込もう。」
これ、どうでしょうか?
- 問題点
- 年間120万円という金額大丈夫ですか?110万円を超えると、贈与税がかかります!
- 対策
- 金額を110万円未満、そして「毎年同じタイミング、同じ金額」を避ける。例えば、
- 2022年:1月に87万円、6月に3万円、7月に20万円
- 2023年:3月に5万円、4月に25万円、12月に80万円
- 金額を110万円未満、そして「毎年同じタイミング、同じ金額」を避ける。例えば、
- まとめ
- 税務署は贈与と認めるが、その額に注意!毎年同じ額にしてはNG、毎年同じタイミングと同じ金額にしてはNGです。これは定期贈与という疑いを掛けられてしまうためです。詳細は後半で説明します。
そうなると、
シチュエーション:親が子どもの口座に振り込んだお金は親の隠し財産では?
「なるほど。では年間110万円未満となるようにしよう。」
これはどうでしょうか?
- 問題点
- 税務署の基本スタンスは、税率の違いから、贈与ではなく相続(親の資産)にもっていきたいのです。相続の方が、がっぽり税金を取れますから。そのため、なにかと理由をつけて、「これって贈与になりませんね。やはり親の資産ですよ、これは。だから相続扱いになります」としたい訳です。さてある日税務署から連絡があり、「確かに110万円未満なので贈与税はかかりませんが、やはり親御さんのお金ですよね。そもそも贈与ではないですね、」と贈与自体のちゃぶ台返しが来たら、あなたは冷静沈着にロジカルに「贈与です」と説明できますか?
- 対策
- これは子供と親で贈与契約書を作っておき、「ほら、ここに子供の署名があるでしょ。どこもがもらったと言ってます」と証書をみせればよいです。
- まとめ
- 税務署が贈与として認めず、一段上の相続扱いにされないように注意!
最後に、
シチュエーション:親が子供に代わり、資産運用する
「さて、振込はできた。でもそのままおいておいたら増えないから、投資が必要だよね。じゃあ、親である私が株を買って運用しよう。」
これはどうでしょうか?
- 問題点
- 税務署視点では「贈与契約書があるのはわかりました。でも実態としては、やっぱりこれって子どもの名前を使って親が株を買って自分の資産を増やしているんでしょ?はい、相続です。」と突っ込めますよね。と言われた時、このボールをしっかり打ち返せますか?
- 対策
- これは民法で子どものお金は法定代理人が管理することになっています。法定代理人とは親権者と考えればよいです。だから、これについては特別の対策は不要ですが、敢えて挙げるとすればこの知識を有していることです。
- (財産の管理及び代表)第824条
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表
- (財産の管理及び代表)第824条
- これは民法で子どものお金は法定代理人が管理することになっています。法定代理人とは親権者と考えればよいです。だから、これについては特別の対策は不要ですが、敢えて挙げるとすればこの知識を有していることです。
- まとめ
- 親が子どものお金を管理するのは当然(民法で決まっている)ことを知っておくべし!
もう一歩踏み込み
定期贈与、暦年贈与などなど調べていくと知らない言葉が出てきます。ここからは上級者向きになるのですが、簡単に説明します。
定期贈与とは?暦年贈与とは?
税務署に「これは贈与としては認められません。それは、相続対策として毎年贈与税がかからない範囲で渡していたのでしょ?」と疑われたとします。この税務署の指摘が定期贈与であり、ネガティブな意味で使われます。
定期贈与とは、定期の給付を目的とする贈与のことで、一定期間、一定の給付を目的に贈与を行うこと(定期金の贈与)をいいます。
たとえば、1,000万円を100万円ずつに分けて毎年贈与するという取り決めをすると、定期贈与とみなされます。
定期金の贈与とみなされると、贈与の開始時にすべての金額を贈与する意思があったとみなされて一括して贈与額の合計額に対して贈与税がかかってしまいます。贈与税の税率は、4,500万円を超えると55%になってしまいます。相続税は6億円を超えると税率が55%となるのと比較すると、かなり重い税率ということになります。経理compass暦年贈与とは|定期贈与とならないための6つの注意点|freee税理士検索暦年贈与は、相続税対策の王道とも言える方法です。110万円の基礎控除を活用し、贈与税がかからない方法で毎年コツコツと贈与をしていきます。しかし、その贈与が「定期贈与」とみなされてしまうと、贈与税がかかってしまうので注意が必要です。
一方で、我々としては「いやいや、そんなことありません。1人につき110万円までは、子どもに財産をあげても税金がかからないという法律に則っています。実際、贈与契約書もあります。そして、毎年同じ金額でもなく、同じタイミングでもない。つまり定期贈与にあたる条件を満たしていません。」と反論しますよね。この主張が暦年贈与であり、ポジティブな意味で使われます。